人生を決定づけている脳の3ヶ所

心はどこにある?心の場所は脳にある

脳の研究が進んだことによって、今では「心の場所」は脳の中にあることがわかっています。これまでは、英語で心を意味する「heart」という語が同時に心臓を意味するように、「心」は心臓の位置にあると考えられていました。

もちろん、これは大きな発想の転換でした。でも、この事実を知っただけで満足している人がほとんどで、私たちは脳の「どの場所」に心があるかまで正確に知っている人はごく少数のように思います。

はっきり申し上げますと、「心は脳の中にある」という曖昧な知識だけでは、知識がないのとほとんど変わりません。もちろんストレスを「消す」ことなんて、とても無理な話です。というのも、ストレスによって心が病んでしまうということも、脳の中にその要因があるからです。

「脳ストレス」という言葉を使うのも、まさに、みなさんに「心の場所」を明確に知ってもらうためです。精神的なストレスヘの対処も、「心の場所」を突き詰めることで初めて明らかになりました。私たち人間は他の多くの動物よりも大きな脳を持っています。

身体の大きさに対する脳の割合でいうと、人間は一番大きな脳を持っているといえます。

チンパンジーと人間も、脳をみればその違いは一目瞭然で、人間の方が遥かに大きな前頭葉を持っています。私たち人間の脳は、その進化とともに少しずつ発達してきたものです。そのため、最も原始的な脳である「脳幹」を中心に、その外側に少しずつ新しい脳が「増築」されたような構造になっています。

脳幹は別名「自立脳」といって、呼吸、循環、消化などの自律神経機能、さらには阻囁や歩行といった基本的な生命活動に必要な、運動を調節する機能が存在しています。その脳幹の上に位置するのが間脳「視床下部」。視床下部の別名は「生存脳」といい、食欲と性欲という生存に不可欠な働きをしています。

視床下部の外側に位置するのが「大脳辺縁系」。ここは、喜びや悲しみ、怒りや恐怖などさまざまな感情が形成される場所なので「感情脳」といいます。私たちにとって身近な動物である犬や猫などのペットが感情豊かな行動を見せるのは、彼らの脳にこの大脳辺縁系があるからです。

人間の脳が、他の動物と大きく違うのは、この大脳辺縁系のさらに外側で、脳の一番外側に位置する「大脳皮質」が発達していることです。人間が豊かな知能を持ち、言葉を使い、社会的な生活を営むことができるのは、大脳皮質が発達しているおかげなのです。

大脳皮質は、その場所によって大きく4つに分類されます。顔のある側を「前頭葉」、両サイドを「側頭葉」、頭頂部付近を「頭頂葉」、背中側を「後頭葉」といいますが、耳にしたこともある人も多いはずです。

さて、ではこうした構造の脳のどこに「心の場所」はあるのでしょう。心の場所は、実は「2ヶ所」 あります。1つが感情脳(大脳辺縁糸)。そしてもう1つが感情脳と強く結びついている「前頭前野」です。前頭葉の中でも、最も前の方に位置する部分を、特に前頭前野といいますが、心の場所の中心は、その前頭前野にあると考えられるのです。

つまり、この前頭前野の働きによって、ストレスを感じたり、逆に解消したりすることができるのです。「人間らしさ」のすべてを形成している脳であり、脳ストレスを生み出してもいる脳なのです。

ストレスを感じているのは脳 | 健康メモ

「こんちくしょう」から「ありがとう」で人生が変わる

「許せない」と思ったら発想を変えてみる

世の中というのは、理不尽なことがときどき起こる方がまともなのではないだろうか。私はつねにそう考えています。そう言ってしまうと、「理不尽なことがあって、どうしてまともな世の中といえようか…」そんな反論が返ってきそうですが、みなさん、ご自分のまわりをよく見渡してみてください。

会社でも、家庭内でもいい。また友人関係や親兄弟の間柄でもけっこうです。あらゆる人間関係において、すべてが平穏無事に何1つ文句なく過ごせているという人が、はたしてどれだけいるでしょう。

どんな関係にあっても、人と人とが交われば、そこには必ず対話が生まれ、その対話はときに摩擦となって人の心を刺激する場合があります。そういう刺激に対していちいち腹を立てて「こんちくしょう! 」と言っていたのでは、心のバランスは乱れるばかりです。

つまり、「理不尽なことがあった方がいい」というのではなく「私たちの生活には、理不尽なことが満ちている」ということを頭に置いて日々を送った方が、ずっと楽に生活できるということなのです。

ところで、みなさんは『 ありがとう 』という言葉をどれくらい言っているでしょうか? この『 ありがとう 』という言葉は、不思議なもので言ったほうも言われたほうも、なんだか心があたたかくなって幸せな気持ちになりますよね。普段あまり周りの人に感謝の気持ちを伝えていないなと思う人は、ぜひ、ありがとう と言いましょう。

さて、そもそも私たちが身を置く社会というのは、実にさまざまな人間がいるわけです。そういう中で、いろいろなトラブルに遭遇したとき「とっちめてやろう! 」と思うのか「トラブルなんてつきものだから、まあ、いいか」と思うのとでは、そのあとの心の持ち方が大きく違ってきます。

他人の言動に対して「許せない」と思いやすい人は、怒りの深みにはまっていくのです。そして、そんないらだちの感情を言葉にし続けると、免疫力は低下していきます。根本的なことをいえば、他人の性格など、自分がいくら怒っても変えられるものではないということです。つまり、人の心を変えようとするのではなく「いくら言ってもしかたないな。だから許そう」と、自分の心を変えていく努力が大切なのです。
こういうことが実践できれば、人の心はずいぶん楽になると思います。

度を超すリラックスも病気を招く原因になる

副交感神経が優位な体質は免疫力が高い

私たちの健康は、日中にほどよく働き、ほどよく食べて、夜はぐっすり眠ることで保障されています。病気が作られるのは、この活動と休息のバランスがくずれたときです。

つまり、ストレス過剰の無理な生き方に対し、リラックス過剰の楽な生き方でも自律神経の良好な働きが妨げられ、人問は健康を保つことが難しくなるのです。自律神経から見た、楽すぎる生き方とは、毎日満腹になるまで食べて体を動かさない、不活発な生き方です。

飽食と運動不足は、副交感神経を優位にし、白血球中にリンパ球をふやします。リンパ球は、ウィルスや体内で発生した異常細胞の排除に働く免疫細胞なので、リンパ球がほどほどに多いのは、カゼもめったにひかない、免疫力の高い体調といえます。

ところが、リンパ球も必要以上にふえると、過剰反応を起こします。本来は無害な少しの異物も敵と見なして炎症を起こし、排除しようとするのです。この反応が表面化したのが、いわゆるアレルギー疾患です。また、副交感神経が優位なリラックス時には、アセチルコリンの指令を受けて、プロスタグランジンの分泌が盛んになります。

このホルモンは血管を開き、血流をふやして傷ついた組織の修復を促します。その際、組織は発熱し、知覚神経も過敏になるため、リラックス過剰でプロスタグランジンの活性が高まりすぎると、治癒反応として引き起こされるアレルギー性の炎症も激しさを増し、かゆみや痛みなどの症状が強くなります。

アトピー性皮膚炎にしろ、花粉症にしろ、近年、社会問題になるほどアレルギー疾患患者が急増し、重症化の一途をたどっています。これは、生活の豊かさを背景に、現代人の体質が交感神経の緊張型から副交感神経型へと移行した結果なのです。

例えば、甘いお菓子を食べてストレスが解消できるのは、砂糖が副交感神経を優位にする最強の食べ物だからです。しかし、食べようと思えば毎日でもケーキが食べられるようになったのは、ここ30~40年の話で、まさしくアレルギー疾患の増加が始まった時期と一致します。

ストレスに弱いが病気は治りやすい

さらにその前提には、生活様式の変化に伴う、運動量の低下が存在します。思い起こせば、青森県の私の生家に水道が通ったのは、私が小学校2、3年のときでした。それ以前は井戸水を運んで炊事・洗濯・掃除をし、入浴をしていたわけですから、家事も今とは比べものにならないくらい重労働だったことがわかります。

さらに、その後に訪れた車社会、道路や住宅のバリアフリー化により、現代人の生活は、人問を徹底的に甘やかす世界に突入しました。免疫力の高まりが平均寿命を延ばす一方、現在はリラックスの行きすぎで認知症や足腰の痛みを抱えるお年寄りがふえ、新たに「健康寿命の延長を」と叫ばれる時代を生んだのです。

運動量の低下によって、真っ先に弱るのが筋肉です。筋肉がひ弱だと、ふくよかな肉体を支えきれずに問節に過剰な負担がかかります。さらに、筋肉は静脈血を心臓に押し戻すポンプの役目を果たすため、筋力の低下に伴い血流も悪化して、体内に老廃物がたまりやすくなります。

また、運動不足は骨へのカルシウムの沈着を妨げ、骨租髭症を促進することもわかっています。これらが、中高年者が訴える足腰の痛みの原因です。すなわち、現代人が健康寿命の延長を可能にするには、年を取れば取るほど積極的に体を動かし、筋肉を鍛える努力が必要になってくるわけです。

もう1つ、楽すぎる生き方の究極の弊害として、交感神経の刺激不足によって引き起こされる、ストレス耐性の低下が挙げられます。現代人がリンパ球の豊富な免疫力の高い体質を持ちながら、病気を蔓延させている原因も、要はストレスに対抗する力の弱さにあるのです。

例えば、うつ病が国民病といわれるほど急増したのも、生まれたときからリラックス過剰で育った人間がふえた結果といえます。ガンや膠原病などに苦しむ患者さんの話を問いても、皆さん感受性の豊かさから悩みを抱え、発病に至った様子がうかがえます。

ただし、過酷な生き方による交感神経の緊張体質のストレス病に対し、リラックス過剰による副交感神経が優位な体質のストレス病は、自律神経が活発に揺れ動きやすいのが特徴です。このため、症状は激しくても、病気そのものは軽症である場合が多く、原因を治療すれば治りやすいということも、ぜひ覚えておきましょう。

その原因治療とは、甘いものの摂取を控え、各自の能力に応じた適度な運動習慣を身につけて、リラックス過剰な生き方を是正することにあります。同時にストレスを軽減する工夫も必要ですが、体に生じたストレス状態は、積極的に体を温めることでも緩和させられます。

ストレスにどのくらい耐えることができるかのチェック