自殺念慮症候群ともなると、周りからもいつもと様子がちがうとわかるはずです。しかし、仕事上の打ち合わせだけだったり、業務はファックスで、面と向かって話し合うのはクレームの出たときだけというような、人間関係が粗末であると、「ちょっと元気がないな」という程度にしかわからないでしょう。
本人もできるだけ、周りに迷惑をかけないようにと思っているので、いつも暗い顔をしているわけではありません。われわれは、もっとお互いの個性がみえるような人間関係をつくらねばならないのです。
自ら自我意識を狭くしている人々には、「つらいときにはカウンセラーのところにいきなさい」とか「医者にかかりなさい」といっても、そのまま素直に通じるわけではありません。
それぞれの個性で悩みを打ち明けたり励ましあったりする関係を、どう構築していくのか。働く人々全体の大きい問題であると同時に、身近に悩んでいる人々を助ける具体的な問題でもあります。
このような個性的な人間関係が最大保障できるのは、家庭です。この大不況のときに、多くの自殺者、さらにその準備状態である「うつ病」や「神経疲労」が増えている現実のⅠつの背景に、現代日本の家庭の憩い、そして癒しの機能がきわめて低下していることもあるでしょう。
この機会に労働時間を短縮し、家庭ですごす時間を増やし、子どもと十分交流できる時間をつくることが、心身の健康を回復し、将来に少しでも希望をもつチャンスになるのではないでしょうか。
労働者、とくに中高年の自殺を防ぐには、労働者の生活意識を変え、家庭に帰る時間を確保する運動を強めると同時に、身近なところで、孤独に問讐解決しょうとするのではなく、心を柔軟に開くことを、お互いに確認しあう取り組みも必要といえるでしょう。
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