無力に生まれて、仲間として育てられ、そこで食べ方も、歩き方も教わります。しかしそれ以上に大切なのは、仲間といることを教えられます。
そこでコミュニケーション能力を身につけていきます。うつ病になるような人の場合、それを教えるべき肉親がその人を仲間はずれにしていじめるのです。
小さい頃のいじめは、大人になって会社に入っていじめられるのと大きく異なります。人間としてもっとも大切な基礎をつくるところで、基礎を滅茶滅茶にされてしまいます。土台づくりをする時期に、土台をつくらせないのです。こうして生きる土台がないまま人生をスタートする人もいるのです。それ以後どのような環境になっても、その素晴らしい環境は、かけ算でゼロをかけられた数字のようにゼロになってしまいます。
肉親は、天使にもなれば悪魔にもなるのです。天使になれる力があるから、悪魔になれるのです。
うつ病者の「ひとが楽しそうにしているとますます心が暗くなる」という言葉は十分に考える必要があるでしょう。
普通は「ひとが楽しそうにしていると自分も気が晴れる、明るくなる」。しかし逆に「暗くなる」ということはどういうことでしょうか。
それは「なんでオレだけが、こうなんだ」という気持ちが強いからです。うつ病になるような人は、普通の人と違って自分は特別に辛い人生を生きていると思っています。その不公平感がうつ病者を苦しめているのです。「なんでオレだけがこんな辛い思いをしなければならないんだ」という無念さです。