何が原因であるにせよ、うつ病になるような人は年齢に関係なく生きることに疲れたのです。よく、「若いのだから、もっと元気を!」と言いますが、うつ病者の脳は若くはないのです。
肉体的に若くても気力はないのです。肉体的に若くても生命力は落ちているということです。生命力が衰えていれば、肉体的に若くても意味がないのです。
アメリカのABC ニュースが朝の番組でうつ病特集をした時に聞いた忘れらせりふれない台詞を思い出します。
それは解説者が、「簡単に言えばうつ病の人の脳は年寄りの脳と同じである」と言った言葉です。
具体的には脳室が大きいというのです。日本に帰ってきて脳の権威である久保田博士に聞いたら首を傾げていたので、それが絶対に正しいとは言いきれないのですが、忘れられない台詞です。
うつ病になるような人はあまりにも長い間悲しみに耐え、情緒的虐待に耐え、激しいストレスの中で生きてきたのです。周囲の人に利用されて生きてきました。
奴隷のように周囲の人に都合良く扱われることに耐えて生きてきたのです。ずるい人にいいように扱われて生きてきました。
そして脳がすり切れたのです。肉体年齢はどうであれ、その間に脳はあまりの苦しみで老化していたのでしょう。
しかし脳の老化は外には見えません。周囲の人はいつまでもきついことを要求し続けます。
人は年寄りに「走れ」とは言いません。しかし脳の老化した人には「走れ」と言います。そして走れないと「なんで走れないんだ? 」と疑問を持ちます。赤ん坊が車道を歩いていれば、人は「アブナーイ! 」と言う。しかし赤ん坊の脳を持った大人が歩いていると、人は「馬鹿野郎!」と言い放ちます。