「辛い気持ち」を身近な人が受けとめる

「病気になって、大変なことになってしまった…」というのは、大変な病気になったという意味ではありません。「大変なことになった」と騒ぐのは、「私にもっとやさしくして」と周囲の人に言っているのです。

「大変なことになった」という言葉は「私をもっと愛して」という意味です。「私の言うことを.もっと『おおごと』に聞いて」という意味です。「私のことを、大変ね、大変ねと、もっともっと騒いでほしい」という気持ちが込められています。

うつ病者が怪我をしようが、大学に落ちようが、失恋しょうが、そのこと自体の解決を求めているのではないのです。まず何よりも一緒に嘆いてくれることを求めているのです。それを周囲の人は、「人生って何でこんなに苦しいのだろう」と一緒に嘆くよりも先にうつ病者を励ましてしまうのです。うつ病者は励まされることを求めているのではありません。辛い気持ちを受けとめてくれることを求めているのです。うつ病者はとにかく愛を求めています。自分に起こつた事態の改善を求め求めているのではないのです。

まず何よりも「この辛い気持ちをくみとってほしい」ということです。事態の改善はその後でよいのです。

アメリカの進んだ柄院では治療に心理的ケアの担当者がつくことがあります。心理的ケアと医者が一緒になってチームを作って治療するのです。患者の抑うつ傾向を治療することが病気の治療に役に立つことが分かってきたからです。

人間関係で第一に大切なことは、相手の気持ちをくみとることです。それは普通の人でも同じです。心理的に健康な人でもそうです。ただ、このことが極めて深刻な影響を及ぼすのが、生きることに疲れた人に対してです。生きることに疲れた人に事態を改善する具体的提案をするのは、相手をもっと追い込むことになるので注意しなければいけません。

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