自分の本当の姿を否定してしまうと生きるエネルギーを失う

働くことで、ますますエネルギッシュになる人と、うつ病になる人のように、消耗してしまう人と、どこが違うのでしょうか。

それは自分の本性にそって自己実現している人と、自分を欺いて無理をして頑張っている人の遠いです。うつ病になるような人は自分を欺いて無理をして頑張っている人です。

長い期間にわたってもっとも活動的な人間は、その年齢にふさわしい心理的に成長した人間と言えるでしょう。これは、自己実現型の人です。「神のために働くとき、額の汗は神経強壮剤だ」という言葉が当てはまる人です。「神のために働く」とは、自分が周囲の人から誉めてもらうために働いているのではありません。それは自分への執着がないということです。

そこが強いところです。「神のために働く」人にはストレスがありません全くないわけではなく少ないということです。自分のできることを必死でしているだけだからです。だから活動的でもあるし、持続もするのです。

うつ病になるような人の努力は自分の本性を否定する努力ですから、努力すればするほど消耗してしまいます。生きるエネルギーを失います。

神経症の一症状としての「神経症的非利己主義」と言った人もいました。こういう人には愛がありません。何をするにも見返りを求めているからです。

これに関連した症状として、たとえば抑うつ、疲労、働くことへの無能力、愛の関係の失敗などをあげています。

神経症的非利己主義者はこういうような症状に悩んでいます。これらは、無理をして自分がなくなることから出る症状です。

このような症状の人は憎しみに満たされています。神経症的非利己主義の人は、なぜこういう症状、つまり生きることに疲れるのでしょうか。

それは自分がチューリップなのにタンポポの花を咲かせようとしているからです。だから自分は努力しているのにいつまでたっても花が咲くことがありません。他の人はそれぞれ自分の花を咲かせています。他の人はそれぞれに自分の目的を持って旅立っています。しかしこういう人はいつも同じ駅にいます。だからさまざまな症状が現れるのです。

「よい子」特有の悲しみ

子供が「自分で自分を守る」とは、相手のお気に入りになることでもあります。それがいわゆる「良い子」ということです。

心の葛藤に苦しみながら社会的には過剰に適応しているのです。このいわゆる「良い子」は対価なしに何かをしてもらえるという体験がないのです。自分が何らかの犠牲を払わなければ人は自分に何かをしてくれないと感じています。だからいつも人の機嫌に怯えているのです。無力な子供は人の機嫌を損ねたら自分は生きていけないと感じているのです。

そこでいつも周囲の人の機嫌に怯えているのです。無力な子供は人のお気に入りになることでしか、自分の生存は維持できないのです。大人になってからは違ってくるかもしれません。

しかし、すでに大人になった時にはそのような感じ方のニューロンのネットワークが出来上がってしまっています。だから大人になってその人の周囲の現実は、小さい頃と違っていても、その人の感じ方は変わらないのです。

その人の周囲の人への怯えは小さい頃と変わりないのです。怯えながら生きる1日は膨大なエネルギーを必要とします。あまり社会的に活躍していない人が「生きることに疲れた」と言えば、心理的に健康な人は「そんなに色々なことをしていないじゃないか」と思うかもしれません。

しかし1日を生きるエネルギーは人によって違うのです。安心感のある人は仕事をすればするほどエネルギッシュになります。不安に怯えている人は何もしないでも疲れてしまいます。生きているだけで消耗するのです。働くことでエネルギッシュになる人と、働くことで消耗する人がいるのです。

子供の頃、誰も自分を守ってくれなかった

自分の周囲の人が自分のことを思って行動してくれた体験がないまま育てば、その人は人の好意をなかなか信じられません。大人になって人が自分のことを考えて行動してくれても、それを好意と感じ取ることは難しくなります。それが人を信じることができないということです。

「こうしたら子供が満足するだろう」と考えて行動する母親がいます。そうした母親を持った子供は、大人になつて人の好意を信じることができるでしょう。

しかし一度としてそのような体験がなくて育った人は人の好意を信じられないのです。子供の頃、誰かが自分のことを守ってくれた体験を持つ者と、自分で自分を守る以外に生きる方法がなかった子供とでは、大人になってからのものの感じ方が違います。

1日を生きるエネルギーが違います。誰かが自分のことを守ってくれた体験を持つ者は安心感を持って生きられます。そうでない者は不安に怯えながら緊張して生きます。ただ生きているだけでエネルギーを消耗します。生きることに疲れた人はこのタイプである。